持続可能な農業生産と地産地消を推進します
野生動物による鳥獣害防止対策
◇獣害対策の背景
多摩地域の中山間地では、ニホンザル、イノシシなどの野生動物による農作物被害が問題となっており、市街化地域の農地ではハクビシンやアライグマなど被害も発生しています。これらの被害は、地域の経済的損失ばかりでなく、農林業従事者の営農意欲を奪い、耕作放棄地の発生の一因になっています。
これまで東京都では、継続的に様々な被害防止対策を行い、ニホンザルやシカについては一定の効果があがってきました。一方、こうした野生動物は自然生態系の構成要素でもあり、その存在は都民の貴重な財産となっています。野生動物との共生を目指すため、農林業従事者や野生動物の生態に精通した専門家等の協力を得ながら獣害対策を推進しています。
◇都内の被害状況
野生鳥獣による農作物被害は昭和40年代頃から発生していますが、昭和50年代後半からその被害件数が多くなるとともに、発生地域も広がってきました。農林業従事者の多い地域では、人々の生活に大きな影響をもたらし、更に水道水源林への被害拡大など、深刻な問題となっています。被害状況の推移は次の図とおりです。
図1 野生獣による農作物被害面積及び被害金額
図2 主な野生獣による農作物被害金額
◇野生獣による食害
・農作物の獣害対策(東京都産業労働局)(PDF 615.5KB)
◇被害防止対策
都内では被害を防止するために電気柵や侵入防止ネット、警戒システムなどが利用されています。また電気柵と警戒システムを併用することで、より効果的な対策が進められています。
(警戒システム:群れサルに発信器を付けて放し、受信機で行動域の情報収集をすることにより、群れの動きを把握し、群サルの追い払いを実施するもの。広域的かつ未然に農作物被害を防ぐことができる。)
◇電気柵設置状況
◇被害を効果的に防止するポイント
電気柵や警戒システムは有効な手段ですが、持続的に被害を防止していくためには、地道に被害発生原因を除いていくことが大切です。このためには、農林従事者のみならず広く都民の皆様のご理解とご協力をお願いします。
(1)餌付けは絶対にしない
野生動物の手の届くところに放置された農産物は全てが餌となります。収穫しない柿や柚子、畑に残った野菜、イモなど、全てが野生動物のエネルギー源になっています。これらも餌付けと考えて、庭木や畑の作付けも見直しましょう。
(2)畑に誘因しない
実が落ちて放置したクリ、高い位置に取り残したカキ、森の中に放置したシイタケなどは、知らず知らずのうちに野生動物を畑に引き寄せています。取り残さずに収穫することが、被害防止につながります。また、キャンプ場で観光客が放置した残飯だけでなく、農家の人達が畑の周辺に捨てた野菜くずも、野生動物を里へ誘因してしまいますので、片付けましょう。
(3)裏山の見通しをよくする
畑周辺にツルや草が繁茂していると、野生動物はそこを伝って畑に忍び寄ってきます。草刈りをして、見通しを確保することで接近ルートを絶ちましょう。また、畑周辺の高い木は、せっかく立てた侵入防止柵の内側に飛び込むための誘導路になってしまいます。樹高の管理にも気を付けてください。
(4)追い払い、見張り
サルが畑に出てきたらすみやかに追い払いましょう。一旦、林内に下がってもしばらくの間は見張りをしましょう。作物がない時期も、畑や人家近くは危険地帯であることをサルに学習させるため、人家周辺に出たら追い払うようにしましょう。
(5)奥山の生息環境改善
人と野生動物が住み分けをするためには、野生動物の生息場所の確保も必要です。森の植物や、昆虫を多様に保つことは、被害防止対策でもあるのです。
◇関係ホームページ
・東京都農林水産部ホームページ(野生獣による農作物被害対策)
・農林水産省ホームページ(鳥獣被害対策コーナー)
◇終わりに
野生動物が存在しているということは、それだけすばらしい自然があるということを意味しています。同じ自然界の一員として人間と野生動物がよりよい関係を結ぶためには、上に述べたような被害対策が必要です。野生動物と人間との共生を目指して、地域全体で知恵と技術を出し合っていくことが今、求められています。