管内農業の概要
(2024年10月編集)
管轄は都内の島しょを除く地域で、管内の農業は、区内・西・南・北多摩の市街化区域、多摩地域の平坦部から丘陵地帯にかけての市街化調整区域、そして西部の中山間地域に区分されます。令和4年の耕地面積は管内全体で5,217haとなっており、都全域の82.9%を占めています。このうち市街化区域内農地は3,523haで、市街化調整区域と都市計画区域外農地が1,694haです。
市街化区域内では、農地3,523haのうち83.1%の2,928haが生産緑地に指定されています。管内の農家数は8,813戸で都全域の92.1%、農業産出額は232.0億円で都全域の88.5%です。
また、管内の農地のある自治体は41区市町村で、地理的状況から、それぞれ地域特性を生かした農業生産が行われています。
生産された農産物は、市場の他、各地域の共同及び個人直売所や量販店のインショップ等で販売され、地域の消費者から好評を得ています。さらに、農産加工に取り組み農産物直売所等で販売する農業者も増え、販売品目の広がりをみせています。
また、意欲ある農業者が自ら経営を計画的に改善するための「農業経営改善計画」の区市町による認定数は1,396件、国及び都による広域認定数は74件となっています(認定農業者制度)。しかし、一方で農地は、都市化や相続の発生等の影響を受け、年々減少傾向にあります。都市的土地利用との調整を進め、農業振興等によって優良農地を保全していくことが課題となっています。また、農業者の高齢化対策としての新たな担い手確保と育成方法も大きな課題となっています。そこで、農業後継者等を対象とし2年間の「フレッシュ&Uターン農業後継者セミナー」や定年退職者等を対象とし農業実技に力点を置いた1年間の「農業実践力養成セミナー」を開催し、新たな担い手対策を実施しています。さらに、レベルアップを望む後継者に対しては、マネジメントを学ぶ「経営力強化セミナー」を、先端技術や最新情報の習得を目的とする方には「高度・先進技術セミナー」開催しています。
また、新たに経営体系として、都市農業の利点を活かし、農業者が耕作を行いながら、都民に農業を体験してもらう「農業体験農園」を実施しています。
地区別の概要 (区部、西多摩、南多摩、北多摩)
1.区部の概要
区部においては、23区のうち、葛飾区、江戸川区、足立区、北区、世田谷区、大田区、目黒区、杉並区、中野区、練馬区、板橋区の11区に農地があります。令和4年の耕地面積は440ha、うち生産緑地は391haで、88.9%が指定を受けています。また、農家戸数は1,251戸で農業産出額は39.8億円です。
主な作目は野菜で、特産のコマツナやキャベツ、トマト等の品目が生産されています。コマツナの区部の農業産出額に占める割合は28%になっています。また、野菜のほかシクラメン等の鉢花、花壇苗や切り花、そしてブドウ等の果樹類も生産・販売されています。
2.西多摩の概要
西多摩は都心から西へ約40㎞~70kmに位置し、青梅市、福生市、あきる野市、羽村市、瑞穂町、日の出町、奥多摩町、檜原村の4市3町1村からなっています。令和4年の耕地面積は1,338haで生産緑地面積は227haです。農家戸数は2,086戸、農業産出額は35.0億円です。
主な作目は野菜(ホウレンソウ、キャベツなどの葉菜類やトマト、キュウリなどの果菜類、ジャガイモ、ダイコンなどの根菜類)で、山間部ではワサビの生産が行われています。また、酪農や肉牛、養豚、養鶏などの畜産が営まれています。
五日市街道沿いのスイートコーン、瑞穂町のお茶やシクラメンが特産品として都民に定着し、新たな経営感覚で農産加工など付加価値の高い農業経営に取り組む農家も出てきています。また、伝統野菜ノラボウナを新たな地域特産物とする取組も行っています。
一方、管内の販売農家では高齢化が著しく進み、担い手の確保と遊休農地の解消が課題となっていますが、近年農業振興地域においては農外からの新規就農者の事例がみられます。このような状況の中、担い手対策として、新規就農者への支援を行っています。
今後は、西多摩地域の豊かな自然を求めて訪れる都市住民を対象に、観光と連携した農業を育てていくことが望まれます。
3.南多摩の概要
南多摩は都心から西南へ25㎞~40kmに位置し、八王子市、町田市、日野市、多摩市、稲城市の5市からなっています。令和4年の耕地面積は1,428haで生産緑地面積は656haです。また、南多摩地域の水田面積は、都全体の半分近くを占めています。農家戸数は2,236戸、農業産出額は63.2億円です。
主な作目は野菜(ホウレンソウ、コマツナなどの葉菜類やスイートコーン、トマトなどの果菜類、ダイコン、コカブなどの根菜類)に加え、果樹(ナシ、ブドウ等)の生産も盛んに行われており、ブルーベリーの生産も拡大しています。また、酪農や肉牛、養豚、養鶏などの畜産も営まれています。
酪農家が整備した小規模な牛乳加工施設により、アイスクリーム、ヨーグルトなどの販売も行われています。また、八王子市では都内唯一の道の駅「八王子滝山」が直売拠点となっており、訪れる都内外の消費者に好評を得ています。さらに、稲城市のナシ「稲城」やブドウ「高尾」など、様々な地域ブランドが定着しています。
この地域でも高齢化が進んでおり、中山間地域に近い地域の担い手の確保と遊休農地の解消が課題です。そのことを踏まえ、新規就農者支援など新たな担い手育成につとめています。
今後は、新たな地域ブランドの確立と販売形態等の工夫が求められます。
4.北多摩の概要
北多摩は都心から最も近い位置にあり、東側は23区に接し、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、国立市、西東京市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市の17市からなっています。地域のほとんどの農地が市街化区域内にあり、令和4年の耕地面積は2,015ha、このうち82.1%にあたる1,654haが生産緑地に指定されています。農家戸数は3,240戸、農業産出額は94.2億円です。
主な作目は野菜(コマツナ、ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリー、ネギなどの葉茎菜類やトマト、スイートコーン、エダマメなどの果菜類、ジャガイモ、ダイコン、サトイモなどのイモ・根菜類)のほか、果樹(ナシ、ブドウ、キウイフルーツ、ブルーベリーなど)や花き鉢物(シクラメン、プリムラ類)、花壇苗(パンジー・ビオラ、ベゴニア、ペチュニア等)、切花(カジュアルフラワー)、緑化用苗木の生産が盛んに行われ、もぎとりや庭先販売、大型量販店との契約販売等、様々な販売方法を駆使し、大消費地の中にある立地を生かした経営が行われています。
特に、立川市、国分寺市、武蔵野市などで生産されているウドは、東京の農産物ブランドとして全国的にも知られています。
今後は意欲的な農業後継者等を積極的に支援していくとともに、農地をいかに保全していくかが課題となります。
(出典)
農業産出額数字は「東京都農産物生産状況調査結果報告書(令和4年産)」
統計数字等は「農林水産関係市町村別統計(令和4年度)」及び「2020年世界農林業センサス」