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管内農業の概要

(2020年12月編集)

 東京都内には現在も沢山の農地が残っており、耕地面積は都全体で6,720haに上ります。このうち島しょ部を除いた農業振興事務所管内の耕作面積は5,627haで、全体の83.7%を占めています。
 都市計画法上、管内は、区部・多摩地域の「市街化区域」、多摩地域の平坦部から丘陵地帯にかけての「市街化調整区域」に区分され、更に統計上、西部は「中山間地域」に分類されます。
 市街化区域内では、農地3,832haのうち80.9%の3,100haが「生産緑地」に指定されています。また、市街化を抑制すべき地域に位置付けられている市街化調整区域のうち786haが、長期にわたり総合的に農業振興を図る地域として、「農振農用地」に指定されています。
 管内の農家戸数は10,331戸で都全域の92.1%、農業産出額は250.6億円で都全域の89.9%です。
 また、農地のある自治体は41区市町村で、それぞれ地域特性を生かした農業生産が行われています。
地区別の概要

 生産された農産物は、市場出荷のほか、各地域の共同及び個人直売所などで販売され、地域の消費者からの好評を得てきましたが、加えて近年は、農産加工に取り組む農業者も増え、販売品目は広がりをみせています。都市農業の利点を活かした新たな経営形態として、農業者が経営の一環として、都民に農業を体験してもらう「農業体験農園」が増加しています。更に、高品質化や省力化を実現する根圏制御栽培や養液栽培などの新たな技術を導入する農業者も増えています。

 意欲ある農業者が自らの経営を計画的に改善するための「農業経営改善計画」の自治体による認定数は1,486件(都全域で1,681件)に達しています(認定農業者制度)。

 平成27年4月には、都市農業の安定的な継続を図り、農業がもつ多様な機能(農産物の供給機能、災害時の防災空間の提供機能、貴重な緑地空間の提供機能など)を発揮させることを目的とした「都市農業振興基本法」が施行され、都内農業の重要性は一層増しています。平成30年4月に生産緑地法の改正により特定生産緑地制度が創設され、平成30年9月には生産緑地の賃借を可能とする「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」が施行されました。

 その一方で、市街化区域内では相続の発生などの影響を受け、都内の農地は年々減少しているため、優良な農地を保全し効率的かつ安定的な農業経営を確立することは大きな課題となっています。また、農業者の高齢化が進行し、後継者も不足していることから、農業経営の魅力を一層高めると同時に、新規就農者などの新たな担い手を確保・育成していくことも重要な課題です。

 これらの課題を解決するため、農業振興事務所では、生産振興や農業改良普及指導、農業用施設の整備支援や防災対策、後継者対策、獣害対策など、幅広い農業振興施策を実施しています。

地区別の概要 (区部西多摩南多摩北多摩

管内概要図

1.区部の概要

 区部においては、23区のうち、葛飾区、江戸川区、足立区、北区、世田谷区、大田区、目黒区、杉並区、中野区、練馬区、板橋区の11区に農地があります。耕地面積は532ha、うち生産緑地は428haで、80.5%が指定を受けています。また、農家戸数は1,455戸で農業産出額は42.9億円です。

 主な作目は野菜で、特産のコマツナやキャベツ、トマト等の品目が生産されています。中でもコマツナは、区部の農業産出額の28%を占める特産品であり、栽培面積が小さいながらも高い栽培技術を生かした集約的な経営が行われています。また、「練馬大根」や「伝統大蔵ダイコン」など、江戸東京野菜として知られる伝統的な野菜を栽培している農家もあります。

 野菜のほかには、シクラメンやアサガオ等の鉢花、花壇苗などの花卉類、ブドウやブルーベリー等の果樹類も生産されています。

2.西多摩の概要

 西多摩は都心から西へ約40㎞~70kmに位置し、青梅市、福生市、あきる野市、羽村市、瑞穂町、日の出町、奥多摩町、檜原村の4市3町1村からなっています。耕地面積は1,382ha、そのうち生産緑地面積は236haです。また、市街化調整区域内では690haが農振農用地に指定されています。農家戸数は2,415戸、農業産出額は36.7億円です。

 主な作目は野菜(トマトやキュウリなどの果菜類、ダイコンやニンジンなどの根菜類、ジャガイモ、キャベツなど)で、奥多摩地域を中心とした山間部ではワサビの生産が行われています。花き類の生産も盛んで、瑞穂町の「シクラメン街道」と呼ばれる岩蔵街道沿いのシクラメン生産をはじめ、羽村市などでも盛んに生産され、ホームユースを中心に消費者に好まれています。

 畜産業では酪農家の割合が多く、ジェラートなど乳製品の加工販売も行われています。そのほかには、肉牛「秋川牛」、都が開発した良質な脂肪を含み風味・味わいに優れる豚「TOKYO-X」、赤色が濃く歯ごたえのある肉鶏「東京しゃも」などが生産されています。

 

 ほかにも、あきる野市のスイートコーン、瑞穂町の「東京狭山茶」が地域の特産品として都民に定着し、新たな経営感覚で農産加工など付加価値の高い農業経営に取り組む農家が出てきています。また、春を告げる伝統野菜「のらぼう菜」を新たな特産品とする取組みも行われています。

 

3.南多摩の概要

 南多摩は都心から西南へ25㎞~40kmに位置し、八王子市、町田市、日野市、多摩市、稲城市の5市からなっています。耕地面積は1,504haで、そのうち生産緑地面積は722haです。また、八王子市の市街化調整区域内では97haが農振農用地に指定されています。更に、南多摩地域の水田面積は、都全体の半分近くを占めています。農家戸数は2,682戸、農業産出額は65.6億円です。

 主な作目は野菜(ホウレンソウ、コマツナなどの葉菜類やスイートコーン、トマトなどの果菜類、ダイコン、コカブなどの根菜類)に加え、稲城市のナシ「稲城」やブドウ「高尾」など、果樹の生産も盛んに行われており、地域の特産品として定着し、贈答品としても利用されています。近年は、亜熱帯果樹のパッションフルーツの特産化も進められています。 

 また、酪農や肉牛、養豚、養鶏などの畜産も営まれており、酪農家が整備した小規模な牛乳加工施設により、アイスクリーム、ヨーグルトなどの販売も行われています。

 さらに、八王子市では、都内唯一の道の駅「八王子滝山」が直売拠点となっており、広く都内外から訪れる消費者の好評を得ています。

4.北多摩の概要

 北多摩は都心から最も近い位置にあり、東側は23区に接し、立川市、武蔵野市、三鷹市、府中市、昭島市、調布市、小金井市、小平市、東村山市、国分寺市、国立市、西東京市、狛江市、東大和市、清瀬市、東久留米市、武蔵村山市の17市からなっています。地域のほとんどの農地が市街化区域内にあり、耕地面積は2,316ha、このうち78.6%にあたる1,820haが生産緑地に指定されています。農家戸数は3,780戸、農業産出額は106.2億円です。

 主な作目は野菜(コマツナ、ホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリー、ネギなどの葉茎菜類やエダマメ、スイートコーン、トマトなどの果菜類、コカブ、サトイモ、ダイコンなどのイモ・根菜類)のほか、果樹(ナシ、ブドウ、キウイフルーツ、ブルーベリーなど)や花き鉢物(シクラメン、プリムラ類)、花壇苗(パンジー・ビオラ、ベゴニア、ペチュニア等)、切花(カジュアルフラワー)、緑化用苗木の生産が盛んに行われ、もぎとりや庭先販売、大型量販店との契約販売等、様々な販売方法を駆使し、大消費地の中にある立地を生かした経営が行われています。

 特に、ブルーベリーは全国に先駆けて小平市で栽培が始まり、同市は農産物としての「ブルーベリー栽培発祥の地」として知られています。立川市、国分寺市、武蔵野市などで生産されているウドは、東京の特産品として全国的な知名度を誇っています。また、数は少ないながらも畜産業も営まれています。

(出典)
農業算出額数字は「東京都農産物生産状況調査結果報告書(平成28年産)」を参照
統計数字は「農林水産関係市町村別統計(平成29年度)」及び「2015年世界農林業センサス」を参照

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